どうしようもないままで美しい僕ら

かんがえたことと日々の記録

夏は

夏は暑いから、食べ物を冷蔵庫にしまわなくちゃ。腐ってしまうからね。

6月なのに、「8月」が間違えてやってきちゃったみたいなの。まだ呼んでないよ。「8月」さんの番はもう少し先だと思うの。

間違いなんてないと言われたら、そうかもしれない。あたしが、6月には「6月」がくるべきだという常識にとらわれてると言いたい?それは、それはそうかもしれないけどさ。

「8月」が来たから「6月」は引っ込んでしまいましたよ。

明後日になれば、7月になるけど、「8月」さんはどうするつもりなのかしら。

夏は暑いから、本も冷蔵庫にしまわなくちゃ。

夏は暑いから、眼鏡も冷蔵庫にしまわなくちゃ。

夏は暑いから、手紙も冷蔵庫にしまわなくちゃ。

夏は暑いから、ぬいぐるみも冷蔵庫にしまわなくちゃ。

夏は暑いから、服は半袖にして、水分をたくさんとらなくちゃ。

そうそう、夏は暑いから、服も飲み物も冷蔵庫にしまわなくちゃ。

夏は暑いから、日差しが強いから、焼けるし焦げるし煮えるから、私も冷蔵庫にしまわなくちゃ。

腐りはしないけどね、勝手に料理されたらたまったもんじゃない。

巨大冷蔵庫に住みましょう。

 

そう、夏があたしを変えてしまったのかもしれない。

予期せず「8月」が来てしまったからかしら?

人間が変わるっていうのは、どういうことだかわかる?

あなたは変わりつづけている?

あたしは、変わりつづけるの。今、あたしが何になっているのか、あたしもわからないわ。あたしは、あたしのこと見えないの。だから、どんなふうにみえるのか、あなたにも聞いてみたい。あたしのかたちは、色は、てざわりは、大きさは、重さは、かたさは、どんなふうなの?教えてよ。

 

「8月」が「6月」を押しのけて突然やってきたみたいに、あなたにも、何かが突然やってくることがあるわ。

でも、世の中のすべてのものやことの絶対量は変わらないの。何かが訪れて何かが去って、無くなったら新しくできるだけだわ。変わっているようだけれどずっとバランスと秩序を保っているの、世界は世界なりのやり方でね。

でたらめだから、信じないでちょうだいね。

 

巨大冷蔵庫の住み心地はどうなのかしら。食べ物を保存する温度と、人間が生活しやすい温度は、もしかしたら違うのかもしれないから、人間は冷蔵庫には住めないかもしれないわね。

 

あたし、今変わりつづけているところなの。だからよく見て。今のあたし忘れないようにして。

あたし今変わりつづけているところなの。だから、あなたのこと、違うふうに思うようになるかもしれない。あたしが変わると、あたしの思うこと、見える世界が変わるの。

変わりつづけているから、形を変え続けているから、どのあたしが本当のあたしだかわからなくなってしまうわ。

昨日のあたしにあった部分は、今日のあたしにもあるのか、それともなくなっているのか、あたしの細胞がたえず生まれて死んで、すっかり入れ替わってしまったら、それもあたしだと思う?

 

ごめんね。それでも、変わりつづけているあたしのそばにいてくれて、よく見ていてくれてありがとう。

あたしが「8月」のせいで巨大冷蔵庫に住もうとしても、あたしを見ていてくれてありがとう。

あたしが信じられるものは何か、もう一度考えてみるわ。

全部が、気のせいかもしれないし。

そしてやって来てしまった「8月」との付き合い方も、巨大冷蔵庫に住むかどうかも、もう一度よく考えてみる。

「8月」だけが夏ってわけじゃないしね。

 

そしてまた、重なったり重ならなかったり、切なくなったり気まずくなったり重くなったり軽くなったり大きくなったり小さくなったり明るくなったり暗くなったりこわくなったり嫌いになったり抱きしめあったり離れたりしよう。