大掃除をした。(というほどの大掃除ではたぶんない)昔書いたノートをひらいて文字を読む。この部屋とももうすぐお別れに近づいていることを思う。
大学4年生のときの授業で、もうひとりの自分と話す劇をつくる課題があって、台本をつくった。その台本も、部屋に置いてあったから、掃除ついでに読んだ。その授業があったことで、わたしのなかの何かは確実に変わって、傷を癒やすことができた?のかな。いちばんやわらかいところ。心の奥の奥の奥の、みえないところ。
いまも大きな別れの時期だ。引越しと転職。
区切りをどうつけるか、ちょうど考えていたので、あのときみたいに、また台本を書いた。
ふたりの自分が話す台本、①のわたしと②のわたしの会話です。
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①わたしあと1ヶ月で死ぬんやって。わたし、ここで生きてくつもりやったのに。
②ほんと?ほんとに、そこで生きてくつもりやったんか?
①ちがうかもしれん。
②あなた、そこで生きていくつもりやった?
①わたし、でも…。でも、ここで生きることに、夢をみてたし、希望をもってたし、誇りももってた。ここでやるぞと思ってたよ。そうじゃなかったら、
②そうじゃなかったら?
①そうじゃなかったら、あんな大変な現場に、自分から行こうと思わんかった。
②たしかに、やる気はあったんじゃない。決意も覚悟も、あなたなりにしてたと思う。自分から、いちばん大変な場所を選んだのは、覚悟のあらわれやと思うよ。
①うん。せっかく頑張ったのにな。なんでわたし死んでまうの。
②わたしたち、話し合ったやろ。
①そうやけど、わからんくなってまうよ。
②なんでかって、わたしたちが選んだからやで。
①そうやなぁ。むごいなぁ。現実、きびしいなぁ。
②そうやな。あなたは、子どもやとは思うよ。これから、わたしは、きびしい現実を生きなあかん。でもあなたはそんなところを、生きんくていいんやで。
①どういう気持ちになったらいいかわからん。
②ごめん。でもわたし、あなたのこと大好きやから。お別れするとしても、あなたがあなたやったこと、誇りに思うし、愛してるし。絶対、あなたが苦しんだこととか、ないがしろにせんし、あなたを抱えたまま、抱きしめたままで、生きていきたいなって思うよ。
①センチメンタルやな。やけに。
②これ、お別れなんやで。なんで1ヶ月も前にって話もあるけどな。
①そうやな。でも、大事なんじゃない?ちゃんとお別れするってことは。次に進むためにさあ。
②そうやと思うよ。もう、お別れの気持ちの準備はできてるの?
①わからん。死ぬってどういうこと。いなくなるって、どういうこと。
②死なんのかもしれん。見えんくなるだけで。生きてるんかもしれん。ちゃんと。
①じゃあ、ちゃんと見ようとしてくれる?
②わからん。あなたは、いなくなったほうが、わたしのためなんかな…。
①それは、悲しい。
②あなたがいたことは、忘れんよ。ずっと一緒に連れてくことはできん。でも、あなたが生きてたらどこかで、またちゃんと会えるよ。だから、ちゃんと、お別れはお別れやから、そこははっきりしよう。
①わかったよ。わたしからも、なんか言わせて。
②うん。
①応援してるよ。やるって決めたこと。自分の道はそこやって思ったこと。それでいいよ。選んだこと、正解にできるよ。絶対できる。あなたはできるよ。タフネス、あるし。あなたは、あなたのためにやる。あなたが選んだ道を肯定する。そのために頑張りなさい。いつも頑張ってるの見てるから。わたしがいなくなったあなたは、もっと強くなると思うよ。寂しいけど、いいと思うよ。あなたが信じるもののために、闘ってみたらいいよ。それがまだ何なのかはわからんくても、ちゃんとわかると思う。信じていいと思う。応援してるから、ちゃんと遠くでみてるから。それだけ。
②ありがとう。頑張りたいと思ってる。心から。あなたが一生懸命に生きてたってこと、わたしだけは忘れない。じゃあ、さよならしよっか。
①②じゃあ、また、どこかで。