人生が動いて、運命に仰天した日。
定刻より10分遅れのしらさぎに乗る。
写真は嘘だと思う。だって現実のほうがうつくしいから、そんなものをうつしとれない。
現実よりうつくしいような写真もあって、それも同様に、完全な嘘だ。
別に嘘は悪くない。嘘も必要だからだ。
ひとつの、現実をうつしとった虚構を愛でる。
そんな嘘にちいさく絶望して、わたしの目でみたものはわたしのからだのなかにしか、ほんとうはないのだ。わたしのからだだけが、すべてをおぼえているのだ。
そんなわたしのからだとふかく結びついた記憶に照らされて、そして、わたしが生きてきたことを思う。
10分遅れで出発したのに、50分の遅れになってしまった。少し疲れてしまった。
昨日から胃の調子がよくない。
福井から帰るときはもうこれが最後みたいな気持ちになる。きっとまた会えるのに。
わたしはこの土地に育てられて生きてきた。
そんな感慨をどうにか抱きしめたくて、写真を撮っている、あたしは。
うつくしいと思うものたちをどうにかとどめたくて。